『近代編前期8 日露戦争と国際関係(含韓国併合)』

【8】 日露戦争と国際関係 (P.112〜115)

1 日清戦争後の中国情勢
 
 列強による中国分割は、地図上で国名と場所をおさえるのがbetter。(私大なら国名と地名が組み合わせれば、ほとんど可だが)ロシアが遼東半島の旅順大連を租借したこと。ドイツの膠州湾(青島)がある山東半島は、この先何度か登場する。先の遼東半島と合わせて地図でも確認。
 列強の中国分割が出題されれば、まずアメリカの「門戸開放覚書(宣言)」を出した国務長官ジョン=ヘイの名前はでる。
 そして、最大の目玉は、『義和団の乱(1899)→北清事変(1900)→北京議定書』の流れ。これによりロシアが事実上、満州を占領し日露戦争の伏線となる。つまり、

甲午農民戦争(東学党の乱)/朝鮮にて→日清戦争北清事変(義和団の乱)/清国にて→日露戦争』がポイント。

2 対露政策
 「日英同盟論=桂太郎・山県有朋 ⇔ 「満韓交換」を内容とする日露協商論伊藤博文」の組み合わせ。日英同盟協約締結の1902年は、意外によくでる。

3 国内世論
 反戦論(非戦論)では、「社会主義の立場幸徳秋水・堺利彦」、「キリスト教内村鑑三」。幸徳秋水らが、始め「万朝報」で反戦論を展開していたが、社長の黒岩涙香が、戦争やむなしと転じたのを受けて、退社して「平民新聞(平民社)」を起こしたことも聞かれる。与謝野晶子の『君死にたまふことなかれ』は、史料と『明星』も注意。

4 日露戦争
 「日清戦争=第2次伊藤内閣 ⇔ 日露戦争第1次桂太郎内閣」で始まる。戦費を増税の他、外債でまかない、ロンドン・ニューヨークで募集したことも知っておきたい。戦局の中の「日本海海戦=東郷平八郎⇔バルチック艦隊」は出来て欲しい。(本当は秋山兄弟で燃えるところだが...エピソード「日露戦争とロシア人墓地」へ)

 目玉はやはりポーツマス条約1905)。斡旋したアメリカ大統領セオドア=ローズヴェルト(ルーズベルト)は、ローズヴェルトだけでは不可。これは第二次世界大戦の時の米大統領フランクリン=ローズヴェルトと、区別のため。それぞれの全権「日=小村寿太郎/露=ヴィッテ(ウィッテ)」は、絶対。露全権で「ヴィッテと( )・・・」としてローゼンを訊いた入試問題があったが、余り気にしなくてよい。

 史料は「下関条約」に比べれば地味。イントロ(露西亜帝国政府ハ・・・)は知っておかなくてはならないが、具体的には「北緯50度以南の樺太の領有権」と「長春以南の鉄道敷設権」ぐらいか。何より大切なのは、賠償金が全くとれなかったということ。これを知った国民は大反発し、条約調印の日に、戦争継続を訴えて日比谷焼打ち事件がおこる。

5 日露戦争後の国際関係
(1)韓国併合(日韓併合)
 不幸な過去だが、直視しなければならない。
「日韓議定書」からはじまり「韓国(日韓)併合条約」まで、史料は全てチェックしなければならない。
受験では、「第二次日韓協約1905)」と「韓国併合条約1910)」を中心に把握する。
 第2次日韓協約のキーワードは外交権の吸収統監府の設置。史料では「統監ヲ置ク」とある。
 そしてハーグ密使事件を機に、内政権も吸収し、軍隊を解散させた「第3次日韓協約」が結ばれる。
 「第3次」の史料は紛らわしい。「予メ統監ノ承認ヲ経ルコト」とあり、「統監」の文字に「第2次」と勘違いしそうだが、「予メ」とあるわけだから、すでに統監は設置されていると判断できれば、ひっかからない。初代統監はもちろん伊藤博文である。ちなみに受験にでる可能性がある、伊藤が初代を勤めた部署は、制度取調局、内閣総理大臣、枢密院議長、そして統監である。
 第3次日韓協約で軍隊が解散させられた後、韓国での義兵闘争が本格化する。その中で安重根による伊藤博文暗殺がおこる。
 そして韓国併合条約1910)。朝鮮総督府が設置され、初代は寺内正毅であった。最近は、「総督は当初武官に限られた」ことや「土地調査事業の結果、日本人地主の土地所有の拡大がはかられ、そのため韓国の小農民が没落し、日本に移住するようになった」ことなどが、正誤問題で問われている。
 朝鮮支配のポイントは、
@政治=朝鮮総督府
A経済=東洋拓殖会社(国策会社)
である。

(2)諸外国との関係
 日露戦争後、日本は諸外国に韓国での権益を認めさせていく。トップは「アメリカ桂・タフト協定」で、韓国とフィリピンの特殊権益を互いに認めあった。しかし、基本的な認識は、日露戦争後、「アメリカとの仲はどんどん悪くなり、逆にロシアとの仲は良くなった」である。日米関係の悪化は、日本が苦労して得た南満州鉄道を、「アメリカと共同経営にしよう」という申し出(桂・ハリマン覚書)を、小村の主張に従って、最終的に日本が断ったことから始まる。このわずか2ヶ月後、「黄禍論(イエローペリル)」が唱えられる中、カリフォルニアでは、日本人移民排斥が州議会で採択され、その半年後にはサンフランシスコ(カリフォルニア州内)で、日本人学童の隔離が決定される(エピソード「小村寿太郎と桂・ハリマン覚書」へ)
 一方ロシアとは、4次にわたる日露協約でお互いの特殊権益を承認していった。
 満州関係は「政治的=関東都督府(旅順)/経済的=南満州鉄道株式会社」(ともに1906年)。ここで正誤問題、「官営の国策会社として南満州鉄道株式会社が設立された」→答えは×。満鉄は半官半民の国策会社です。ちなみに初代総裁後藤新平は、関西の私大などでは意外に出てるね。


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