『近代編前期7 日清戦争/議会政治の展開』

【6】 朝鮮問題と日清戦争 (P.110)

1 1880年代の朝鮮 
 
 日清戦争に至るまでの朝鮮情勢の、基本は、壬午事変(1882)と甲申事変(1884)の順序。重要度は甲申事変1884)が上。
 甲申事変の結果、日清間で天津条約を結び、金玉均らが、日本に亡命した。また、この事件が大阪事件(自由党左派の激化事件参照)を引き起し、福沢諭吉の「脱亜論」へとつながっていく。
 防穀令事件は、最近よく見られる。

2 日清戦争と三国干渉
(1)最大の目玉は、「甲午農民戦争東学党の乱(朝鮮にて)→日清戦争下関条約(伊藤博文李鴻章)」という流れ。
 尚、日清修好条規、天津条約、下関条約と、対清関係の条約の清代表は、全て李鴻章である。

(2)下関条約は、史料も確認
@「清国ハ朝鮮国ノ・・・」→「清は朝鮮の独立を承認
A「奉天省南部ノ地・・・」→「遼東半島・台湾・澎湖列島を割譲」
B「賠償金・・・2億両ヲ」→「これにより日本は金本位制確立
 遼東半島を日本が得たことに対し、三国干渉がおこる。ロシアが中心であることは言うまでもないが、フランスドイツを加えた3国全て知っておかなくてはならない。三国干渉に関連する語句として「臥薪嘗胆」を選ばせる問題もあった。また問題となった遼東半島の場所は地図で確認。山東半島との正誤問題がある。
 領有した台湾経営のために、台湾総督府が設けられたが、総督は、例の第二議会の蛮勇演説の樺山資紀であった。

【7】 議会政治の展開 (P.111)

 第2次伊藤博文内閣を自由党が支持したことは、初期議会の項で記した通りである。第2次伊藤内閣のキーワードは、文句なし日清戦争である。
 そして、日清戦争の後、自由党は第2次伊藤内閣を公然と支持するようになり、伊藤内閣は、自由党党首であった板垣退助を内務大臣に迎えた。

 次の第2次松方正義内閣は、進歩党(もと立憲改進党)を与党とし、大隈重信が外務大臣となったので、松隈内閣(しょうわい内閣)とよばれる。(尚、大隈が外相として条約改正にあたったのは、憲法発布にあたった黒田清隆内閣の時。勘違いなきように。)
コラム 頂いた質問から(16)「日清戦争後の内閣と政党の提携について−松隈内閣を例に−」へ)

 ところが3次伊藤内閣の時、軍拡のために提出された地租増徴案に対し、第一議会以来、地租軽減を要求してきた(三大事件建白運動のスローガンにもなった)自由党・進歩党は、合同してこれに対抗。憲政党を結成した。議会運営の見通しを失った伊藤内閣は退陣し、日本最初の政党内閣である第一次大隈重信内閣が成立した。内相に板垣が就任したので隈板内閣という。
 (ここでよく聞かれる質問について。「中学校の時、最初の本格的政党内閣は原敬内閣と習ったのですが、最初の政党内閣は隈板内閣なんですか。どう違うのですか?」紛らわしいね。第一次大隈内閣は、軍部大臣を除く全ての閣僚を憲政党員が占めた。しかし、大隈も板垣も憲政党員ではあったが、衆議院議員ではなかった。原敬は、陸海外相以外、全て立憲政友会員で、かつ原敬自身も衆議院議員であった。ここが原敬内閣が本格的政党内閣と呼ばれる所以である。)

 しかし、この内閣は成立当初から、大臣ポストをめぐって、旧自由党と旧進歩党との派閥で争いがあり、共和演説事件で、罷免された文部大臣尾崎行雄の後任人事をめぐって、対立が爆発。旧自由党系が離脱し、日本最初の政党内閣は4カ月で終わった。ちなみに、憲政党を名乗った旧自由党は、次の第2次山県有朋内閣を支持し、憲政本党を名乗った旧進歩党の反対を押し切って、地租増徴案を可決させることとなる。

 第2次山県有朋内閣のキーワードは、文官任用令改正と、軍部大臣現役武官制1900)の制定。これらはともに政党の力が、官僚・軍部に及ぶのを防ぐためであるが、特に「魔の制度」とも言われた「軍部大臣現役武官制」は、この後の流れでも頻出し、要注意。
 治安警察法1900)は、基本的には社会・労働運動弾圧で一問一答。ここ以外で出るとしたら、「新婦人協会」ネタ(大正デモクラシー)と「戦後まで廃止されていない→治安維持法が出た後も生きている」といったところか。
 一方、伊藤博文が憲政党(旧自由党系)を母体に結成した立憲政友会1900)については、「自由党を祭る文」から幸徳秋水を問う問題が見られる。

 第2次山県内閣の後、立憲政友会を率いて成立した第3次伊藤内閣は、貴族院に苦しめられて退陣し、これ以降桂太郎(バックは山県有朋)と西園寺公望(第2代政友会総裁、バックは伊藤博文)(「蚊野菜」→つら+ま県・い園寺+藤)が、交代で政権を担当する、いわゆる桂園時代となる。なお、伊藤や山県など、第一線を退いて天皇に首相を推薦するなどする実力者を、元老という。


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