窓 『鎌倉新仏教』

 受験前日となって最後に何を再確認しようかと迷ったら、「鎌倉文化」と「江戸時代の三大改革」だと言ってきた。統計的にこの2つが出題される確率が高い。
 三大改革は、窓 『キーワード 三大改革』でまとめたので、ここでは鎌倉文化のうち、鎌倉新仏教について整理したい。

 本編でも述べたが共通するのは、選択(せんじゃく:1つ選んで)・専修(せんじゅう:それだけが良くて)・易行(いぎょう:簡単)である。そして開祖は全員、天台宗の修行経験がある。

 「念仏無限禅天魔真言亡国律国賊」という言葉に代表される日蓮の強烈な他宗排撃は有名だが、選択・専修は基本的に鎌倉新仏教に共通している。だから法然は非難され迫害されたのである。
 知っての通り、最初に念仏を主張したのは法然ではない。空也であり、源信によって発展した。しかし空也は藤原実頼らTOP貴族との親交も深く、非難も迫害もされてはいない。この違いはどこにあるのか。
 確かに空也は念仏を唱えたが、それ以外の仏教の教理や修行を否定してはいない。それに対して法然は「念仏以外は無意味」だといったのである。つまり旧仏教側の活動を全否定したことになる。ここに大きな違いがある。華厳宗の高弁は著書『摧邪輪』で激しく法然を批判したが、彼の立場を考えれば当然と言える。

 では具体的に整理していこう。大きく分けて念仏題目の3つのジャンルがあり、ほとんどの教科書や参考書はこの分類に従ってまとめられている。

1.念仏は「南無阿弥陀仏」を唱え、極楽浄土に往生することを願う。
2.題目は「南無妙法蓮華経」と唱え、成仏することを願う。
3.禅宗は坐禅による自力本願である。

念仏関係は「法然親鸞一遍」の順になっている。この違いを一言で言うと

1.法然=一心に念仏だけを信じ、唱えれば救われる。 

2.親鸞=一生のうちただ一度でいい。心から「南無阿弥陀仏」と唱えれば、その瞬間にあなたの極楽往生は約束される。

3.一遍=信じてなくていい。「南無阿弥陀仏」と唱えれば、それだけでO.Kだ。

つまり、どんどん簡単になっていく。

は本編でも述べたとおり、

1.栄西公案という悟りにいたるためのテキストがある。

2.道元只管打坐で、「ただひたすら打ち座れ」

これらを踏まえた上で、ここでは時代ごとにまとめたい。
凡例:開祖宗派(成立年代)→キーワード中心寺院):「主著」 :私文系用の難問(やや難問を含む)

1.治承・寿永の乱(源平争乱)期=古代から中世へ
@法然浄土宗(1175)→専修念仏知恩院/京都)
     :「選択本願念仏集」「一枚起請文」
難:「選択本願念仏集」は九条兼実の求めで著された。

A栄西臨済宗(1191)→公案建仁寺/京都)
     :「興禅護国論」「喫茶養生記
難:公案によって悟りを得る禅を看話禅という。


  知恩院三門 

 
  建仁寺法堂

2.承久の乱期(公家優位から武家優位へ)
B親鸞浄土真宗(1224)→悪人正機説、絶対他力(本願寺/京都)
     :「教行信証
※「歎異抄」は弟子の唯円の著
(法然の弟子。法然とともに弾圧されて流刑になるとき、「たとえ、法然聖人にだまされて地獄に落ちることになっても悔いはない。」と言った話は有名)

C道元曹洞宗(1227)→只管打坐永平寺/越前国:福井県)
     
:「正法眼蔵」/弟子の懐奘の著が「正法眼蔵随聞記」
難:曹洞宗では仏法の極意は、文字や言葉を越えて、師から弟子へ以心伝心で伝えられるとする。これを不立文字という。



西本願寺唐門  



永平寺勅使門

3.元寇期(幕末の社会の動乱期)
C日蓮日蓮宗(法華宗)(1253)→題目(身延山久遠寺/山梨)
     :「立正安国論」「開目抄」
※「立正安国論」は執権北条時頼に呈上された。
難:日蓮宗は辻説法で折伏(しゃくぷく)することによって布教

D一遍(遊行上人)=時宗(1276)→踊念仏清浄光寺/神奈川県)
一遍には著書が残っておらず、代わり(?)に円伊が描いた『一遍上人絵伝』が有名
難:一遍に従った人々を時衆という。
難:念仏の札をくばることを賦算という。



久遠寺の桜
(久遠寺は桜の名所です。)



清浄光寺本堂

2006.3.27 

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