エピソード 『分国法で遊ぼう会』

  分国法の内容で、授業や問題集では取り上げられないもので息抜きをする企画です。もし現代語訳が違ってたらすみません。教えてください。(出典は『中世政治社会思想(上)』(日本思想体系21)です。)

「やもめ女、女房とかづし候而売候者、ぬす人たるべし。但、代物に請候而かづし候者、躰に可寄。」 (相良氏法度
 未亡人を女房にすると言って誘拐し、売り飛ばした者は盗人だ。(当然やろ)ただし、質流れとして未亡人をとって誘拐した(売り飛ばした)場合は、状態によって有罪が無罪か定める。(オイオイ)

「夜中に及、他人の門の中へ入、独(ひとり)たたずむ輩、或知音なく、或は兼約なくば、当座搦捕(からめとり)、又ははからざる殺害に及ぶとも、亭主其あやまりあるべからざる也。兼(かねて)又他人の下女に嫁す輩、かねて其主人に不届、又は傍輩に知せず、夜中に入来ば、屋敷の者、其咎かかるべからず。」(今川仮名目録
夜中に他人の家の門の中に入って独りでたたずんでいる者で、顔見知りでもなくアポイントメントもない者を、とっ捕まえたり、あるいは図らずも殺してしまった場合、その家の主人に責任はかからない。また、他人が召し使っている下女と婚姻関係を結び、その女のもとへ通ってくる下人が、その主人にも届けず、周囲の者にも知らせていなくて、夜中に来たのを屋敷の者が殺してしまった場合も、罪には問わない。(まあ、仕方ないだろうなぁ。ちなみに主人が違う下男下女の間に子どもが生まれた場合は、男の子なら父親の、女の子なら母親の(主人の)もとで育てられることが、習わしであった。)

「童いさかひの事、童の上は不及是非。但両方の親、制止を加ふるべき処、あまつさへ鬱憤を致さば、父子共に可為成敗也。」(今川仮名目録
子どものケンカの事は、(喧嘩両成敗とはいえ)子どものことなので罪には問わない。ただし、両方の親が止めるべきところを、止めるばかりか、鬱憤(うっぷん)晴らしをした場合は、父子ともに成敗する。(何か今でもあるような気がするなぁ。ちなみに今川仮名目録には、15歳未満の者が、過失で友人を殺してしまった場合は、罪に問わないとある。少年法は14歳が境というのは、この時代からあった。)

「路次をゆきき人の、道のほとりの家垣を壊(こぼ)ち、松明(たいまつ)になす事あるべからず。堂塔の事は申にをよばざる也。」(塵芥集
道を行く人が、道端の家の垣(塀)を壊して松明にしてはならない。ましてや(寺の)堂塔は言うまでもない。(これはいかんやろ。ただ、禁止されるということは、する奴が多かったんだろうね。)

「合戦場にて、味方に討たれ候とも、討死同然たるべきなり。」(塵芥集
(これは現代語訳はいらないでしょう。何か悲しいね。さて、この条文は⑴恩賞の問題 ⑵報復の禁止 の2つの意図が考えられるが、前後の条文の並びから、の目的だと思われる。)

「酔狂に人を殺す事、申むねありとも、罪科に処すべし。人を斬り、又は打擲(ちょうちゃく)する事、同罪たるべき也。」(塵芥集
酒に酔って人を殺した場合、酔っていたという理由を主張しても、正気でやったのと同罪である。(酩酊状態で)人を斬り、殴り倒したのも、(正気の時と)同罪だ。(当然やね。「酔っていたんです、覚えてません。」は理由にならない。今の法律もこうならんかな。)

「酒に酔い候て、人もの頼み候とて、目の前へ罷出、かりそめ之義をも不可申。よく酒をさまし、本心の時被罷出、何事をも可披露。可被心得候。」(結城氏新法度
酒に酔って、人に頼まれたからと、(殿様の)御前に出てきて、(ウダウダと言う奴)ちょっとのことでも言ってはならない。よく酔いをさまして、しらふになってから出直して来い。爆笑!いつの時代でもいるんだねぇ。酔った勢いで上司にからむ奴。)

ちなみに酒の上での話には、北条重時(鎌倉時代)の『六波羅殿御家訓』(エピソード「真のダンディズム」参照)に次のようなものがある。

「一 イカニ入(いり)ミダレタル座席ニテモ、我前ナラデ、人ノ前ナル酒・肴・菓子躰物(ていのもの)トリテ食ベカラズ。」
どんなに入り乱れた宴席になっても、人の膳のものを食うな。(これも爆笑!君たちにも分かる日が、きっと来ます。)

(2002.11)

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