エピソード 『大津事件その後』

 最初に断っておきますが、これはゴシップです。真相のほどの確証はありません。そのつもりで読んでください。

 近代日本が初めて迎えた国賓が、ロシア皇太子でした。ところが、大津事件で、巡査津田三蔵が、皇太子に切り付けた。明治政府はパニックとなります。事実、オーストリア皇太子暗殺から、第一次世界大戦は始まるのですから。しかし、明治天皇が正式に謝罪したことなどから、ロシアで反日感情はあがりませんでした。
 さてと、皇太子が軽傷ですんだのは、皇太子が乗った人力車を引いていた車夫が、身を挺してかばったからです。政府は喜び、感謝しました。「本当によくやってくれた。日本は救われた。」人力車のおじさんは、政府から褒美をもらい、それで家を建て、娘は女学校に通えるようになりました。

 ところが、月日は流れ...。日本はロシアと戦争をすることになりました。日露戦争です。時のロシア皇帝はあの時の皇太子です。人々はいいました。
 「おまえがあの時、いらんことをせんかったら、ロシア皇帝なんかおらなんだんじゃ。」
 おじさんは、国賊よばわりされ、家をたたんで夜逃げしました。その後、おじさんの行方は誰も知らないという...。世の中なんてそんなもんさ。

(くれぐれもゴシップですからね、念のため。でも意外に本当かも知れない。)  

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