東大チャート 1994年度 『東京大学 第3問』 解答例と解説

ー江戸時代初期の朝幕関係ー  

<野澤の解答例>

幕府は禁中並公家諸法度を制定して朝廷統制の基準を示し、それが天皇の勅許より優先するとしながらも、全国支配の正統性を主張するために朝廷権威を利用した。朝廷は徳川家康の神格化という幕府権威の高揚に積極的に協力する一方で、幕府の力によって伝統的儀礼の復興に成功した。両者は幕府優位の下、相互に依存していた。 (150字)


<解説>

ア 「幕府は禁中並公家諸法度を制定して朝廷統制の基準を示し、それが天皇の勅許より優先する」← チャートのBブロック
                  ↑                                ↑
        山川の『詳説日本史』のP.164のまま。         『詳説日本史」のP.165の紫衣事件の脚注

イ 「全国支配の正統性を主張するために朝廷権威を利用した。」← チャートのAブロックのまま。


ウ 「朝廷は、徳川家康の神格化という幕府権威の高揚に積極的に協力」← チャートのCブロックの上の段

  徳川家康が東照大権現の神号をえた→家康の神格化幕府権威の高揚

  日光東照社に宮号を勅許する。この結果、日光東照宮となる。翌年、日光例幣使を派遣する。→権威高揚に積極的に協力


エ 「幕府の力によって伝統的な儀礼の復興に成功した。」← チャートのCブロックの下の段

  原文のままなら、「幕府の力によって長く中絶していた伊勢例幣使の再興を果たした。」だが、ここはもう一歩考えたい。
  同じ年に、日光例幣使を派遣した見返りに、長く中絶していた=以前には行われていた伝統的儀礼 の復興に成功した。
  ここで大切なことは、天皇の祖先神を祀る伊勢神宮への例幣使派遣という伝統儀礼の復興を果たしたことであって、伊勢例幣使そのものではない。

オ 「両者は幕府優位の下、相互に依存していた。」← チャートのまとめのブロックのまま。

  「相互に依存する関係であった。」でもちろんOKなのだが、150字という字数内におさめるために縮めただけである。


2011.4.23

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