東大チャート 2005年度 『東京大学 第2問』の設問A

ー 御成敗式目制定の意図ー

<野澤の解答例>

幕府は公家法を知らない御家人に対して独自の武家法を制定し、公平な裁判の基準を明示することで、武家社会を統制しようとした。 (60字)


<解説>
 最後の決めぜりふに尽きる!

 法を制定するのは何のためかという、根本を問うている。

 社会を統制するため

 社会を秩序づけるため

 である。

 北条泰時は、連署や評定衆を置いて、執権とともに幕府の政務の処理や裁判にあたらせ、合議制にもとづいて政治を行った。集団指導体制の導入は、執権の力が強まることに対する反発を緩和するねらいもあったが、合議制による判断の基準としても成文法が必要にもなった。

 泰時が弟にあてた書状の中で、「武士は真名(漢字)が読めないから、尊い律令の掟を知らない(理解できない)」と朝廷に説明しなさいと言っているのは、さらに言えば、「法を知らない無法者である御家人を統制する(秩序づける)には、彼らに理解できる法が必要なのです。だからちゃんと漢字が読めて公家法がわかる貴族の皆さんには関係ないのです。」と答えなさいと言っているのである。

 この「武家社会の統制(秩序づけ)のため」というのは、幕府内部におけるニーズであったとともに、朝廷に対する式目制定の正当化の理由でもあった。


2011.10.30

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