<野澤の解答例>
幕府はキリスト教禁圧と貿易統制のため、日本人の海外渡航を禁止し、外国との通交を中国・朝鮮・琉球・オランダに限定した。中国・オランダとは長崎で貿易のみを行い、朝鮮とは対馬の宗氏に、琉球とは薩摩藩に交渉を独占させて貿易と国交を結んだ。そしてこの関係を固定的に考え、他国と新たな関係を結ぶことを拒否した。(150字)
<解説>
幕府は、
キリスト教禁圧 ←山川『詳説日本史』P.172 L.20
と
貿易統制 ←『詳説日本史』P.173 L.13
のため、
日本人の海外渡航を禁止し、 ←Aブロックのまま
外国との通交を中国・朝鮮・琉球・オランダに限定した。 ←Bブロックの書き出しのまま。
中国・オランダとは長崎で貿易のみを行い、 ←Bブロックの1
この部分は少し難しかったのではないか。『詳説日本史』のP.173の脚注に、「幕府は中国との正式な国交回復を断念し、中国船との私貿易を長崎で行うことにした。」とあるように、中国との国交は開かれず貿易のみの通商国であった。同様のことはオランダに対しても言えるが、当時の幕府にとっては、国交もある通信国と貿易のみの通商国との違いは意識されておらず、ここは「長崎で貿易を行った。」という内容があれば構わないとぼくとしては考える。
(余談だが、勤務校の高校1年生にこの問題を解かせたとき、中国・オランダとは国交は結ばれず貿易のみを行い、朝鮮・琉球とは国交も結んだ」と、教科書にも明示されていないことを、はっきりと書いている生徒がいて驚いた。なぜ知っているのかと尋ねると、「どこかで読んだ。」とのことであった。この「どこかで読んだ。」という読書量の豊富さが、本当は大切なのだと改めて感じた。)
朝鮮とは対馬の宗氏に、琉球とは薩摩藩に交渉を独占させて貿易と国交を結んだ。 ←Bブロックの2
『詳説日本史』のP.175〜176の内容である。
朝鮮についてはP.175の脚注に「宗氏の特権とは対朝鮮貿易を独占することである。」と記されている。また、通信使の説明として、「信(よしみ)を通じる修好を目的とした使節の意味である。」と記されており、国交と貿易の両方があったことがわかる。
琉球については、薩摩藩が「通商交易権を掌握した」こと、また謝恩使と慶賀使が来日したことの記述から、これも国交と貿易の両方があったことがわかる。
チャート2では、朝鮮と琉球で分けていたものを、解答例では一文にまとめた。
そしてこの関係を固定的に考え、 ←Cブロック
理由のあること、由緒のあることというのは、早い話が「変える気はない=固定的なもの」という意味である。「鎖国は祖法」という表現を知っていれば、「これを祖法として」という文章でもよい。
他国と新たな関係を結ぶことを拒否した。 ←Dブロックのまま
なお、Cブロックを「これを祖法として」にして字数が余るようなら、Dブロックを「ロシアなどの新たな国と〜」と具体的記述にしてもよいと考える。
2011.4.25