2008年度 『京都大学 その2』

明治維新から日清開戦までの日清関係

【W】(2)明治維新から日清開戦にいたる日本と清国の政治・外交関係の推移について述べよ。 (200字以内)

<考え方>
問われていることは、
(1) 明治維新 から
(2) 日清開戦まで 
(3) 日本と清国 
(4) 政治関係の推移
(5) 外交関係の推移
 を述べる
(6) 200字以内で述べる。
ことである。

 明治初年から日清開戦までの関係で単純に思いつくことを並べると、
@ 日清修好条規という変則的であるが対等条約を結んだ。
A 琉球の帰属を巡って対立したが、台湾出兵において清国が日本の義挙を認め、事実上の賠償金を払ったことから琉球処分を断行した。
B 日本が朝鮮を開国させて以来、親日派と親清派との対立がおこり、朝鮮の宗主国を自認する清国との関係は、甲申事変で極めて悪化した。その打開のために天津条約が結ばれたが、甲午農民戦争を機に、日清戦争が開かれた。

という流れだと思う。教科書(山川『詳説 日本史』)から要点を抜き出してみたい。

ア 1871年、清国に使節を派遣して日清修好条規を結び、相互に開港し領事裁判権を認めることなどを定めた。(注)日本が外国と結んだ最初の対等条約であるが、日本はこれに不満で、1873年にようやく批准した。(P.249)
イ 琉球王国は、江戸時代以来、事実上薩摩藩の支配下にあったが、名目上は清国を宗主国とするという複雑は両属関係にあった。政府はこれを日本領とする方針をとって、1872年に琉球藩をおいて政府直属とし、琉球国王の尚泰を藩王とした。しかし宗主権を主張する清国は強く抗議し、この措置を認めなかった。(P.249〜250)
ウ 1871年に台湾で琉球漂流民殺害事件が発生した。(略)政府は台湾に出兵した(台湾出兵)。これに対し清国はイギリスの調停もあって、日本の出兵を正当な行動と認め、事実上の賠償金を支払った。ついで1879年には、日本政府は琉球藩および琉球王国の廃止と沖縄県の設置を強行した(琉球処分)。(P.250)
エ 1876年、日本が日朝修好条規によって朝鮮を開国させて以後、朝鮮国内では親日派勢力が台頭してきた。(略)(壬午軍乱の)反乱は失敗に終わったが、これ以後、閔氏一族の政権は日本から離れて清国に依存しはじめた。これに対し、日本と結んで朝鮮の近代化をはかろうとした金玉均らの親日改革派は、1884年の清仏戦争での清国の敗北を改革の好機と判断し、日本公使館が援助するなかクーデタをおこしたが、清国軍の来援で失敗した(甲申事変)。この事件で極めて悪化した日清関係を打開するために(略)天津条約を結んだ。これにより、(略)当面の衝突は回避された。(P.265〜266)
オ 天津条約の締結後、朝鮮に対する影響力の拡大をめざす日本政府は、軍事力の増強につとめるとともに、清国の軍事力を背景に日本の経済進出に抵抗する朝鮮政府との対立を強めた。(注)防穀令事件(P.267)
カ 1894年、朝鮮で東学の信徒を中心に減税と排日を要求する農民の反乱(甲午農民戦争)がおこると、清国は朝鮮政府の要請を受けて出兵するとともに、天津条約に従ってこれを日本に通知し、日本もこれに対抗して出兵した。農民軍はこれをみて急ぎ朝鮮政府と和解したが、日清両軍は朝鮮の内政改革をめぐって対立を深め、交戦状態に入った。(略)同年8月、日本は清国に宣戦を布告し、日清戦争が始まった。(P.267〜268)
 これら200字以内に要約すればよい。

<野澤の解答例>
明治初め、対等な日清修好条規が結ばれたが、清は琉球と朝鮮の宗主権を主張し、日本と対立した。政府は琉球を日本領とする方針をとり、台湾出兵に続いて琉球処分を強行し、沖縄県を設置した。朝鮮国内では親日派勢力が台頭してきたが、甲申事変によって勢力は後退した。天津条約締結後、朝鮮への影響力拡大をめざす日本に対し、朝鮮は清国の軍事力を背景に抵抗した。日清両国は甲午農民戦争を機に対立を深め、日清戦争が始まった。(200字)

<参考>
 基本的に三省堂の教科書も同様の内容であるが、実教には次のような記述が見られる。「(天津条約締結後)日本は朝鮮をめぐって清国と対立していた。しかし、1880年代後半、列強、とくにロシアの朝鮮進出への不安が高まると、ロシアに対抗するために、清国と協調しようという考えも日本政府に強まり、日本の対清政策は二面的となった、1893年に日本と朝鮮との間で防穀令をめぐる紛議(防穀令事件)がおきたとき、日本政府は清国に調停を依頼し、事件を解決した。」
 また、沖縄県設置(琉球処分)で、琉球帰属問題は幕を閉じたのか(清国は琉球の宗主権を放棄したのか)という疑問もあるかもしれない。当然だと思う。これは日清戦争のおける日本の勝利によって自然消滅した。

 
2012.8.6


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