2017年度 『大阪大学 その1』  
   
    自然環境の変化と縄文文化の採取経済のあり方  
     
   (T) 更新世(洪積世)から完新世(沖積世)への移行にともなって自然環境が変化し,日本列島では豊かな縄文文化が育まれた。
  自然環境の変化と関連づけながら,縄文時代における採集・狩猟・漁労のあり方について,具体的に述べなさい
  (200宇程度)。
 
 
<考え方>

 
求められていることは

(1) 縄文時代における採集・狩猟・漁労のあり方について,具体的に書く
(2) 更新世(洪積世)から完新世(沖積世)への自然環境の変化と関連づけて書く
(3) 200字程度で書く


ことである。

 縄文文化の一番のキーワードは、温暖化したことである。このことは、通史編の最初のページに、

とにかく時代のイメージをつかんで欲しい。気候が温暖化したことがすべてをつなげる。
「気候が温暖化して氷河期が終わる→海面上昇→日本列島が大陸から切り離されて成立した。」
「気候が温暖化した→食料が豊富になった→定住生活を営めるようになった→竪穴住居の集落ができた。」 

と書いたとおりである。
 つまり、温暖化したから〇〇となって,採集のあり方は●●となった。
      温暖化したから△△となって,狩猟のあり方は▲▲となった。
      温暖化したから□□となって,漁労のあり方は■■となった。

とまとめることができれば良いことになる。
 それでは、実教の教科書『日本史B』から該当するところを抜き出してみる。

(1) いまから1万5千年前ころを境に地球は温暖化へと向かい,約1万年前の完新世のはじめには気候はこんにちとにた
  ものになった。氷河はとけて海面が上昇し(海進),大陸から切りはなされて日本列島が形成された。
(2) すでに大型動物は絶滅し,シカ・イノシシ・ウサギなどの中小動物が狩猟の対象となり,これをとらえるために弓矢や
  落とし穴がさかんに用いられた。
(3)  陸地の奥深くまで海水が進入し,魚貝類の生息に適した遠浅で砂泥質の入江が各地に形成された結果,漁労が活
  発となり,釣針・銛などの骨角器や網を用いる漁法が発達するとともに,貝をさかんに採取した。
(4) 遺跡からはマグロやカツオなどの外洋魚の骨も出土しており,丸木舟を使った沖合漁もおこなわれていたことがわか
  る。
(5) 気候が温暖になるとともに東日本では落葉広葉樹林が発達し,西日本では照葉樹林がひろがった。この植生の変化
  にともなって,クルミ・トチ・ドングリなどの堅果類や,ヤマイモなどの根菜類をはじめ植物資源も豊富になった。また,
  土掘り用の打製石鍬,木の実などを割ってすりつぶす石皿やすり石などが使われた。

以上を200字程度でまとめれば良い。

<野澤の解答例>
温暖化して氷河がとけ,海面が上昇した。大型動物は絶滅し,シカやイノシシなどの中小動物が狩猟の対象となり,弓矢や落とし穴が用いられた。遠浅の入江が各地に形成された結果,釣針・銛などの骨角器や網を用いる漁法が発達し,貝もさかんに採取された。丸木舟を使った沖合漁も行われた。植生の変化にともなって,ドングリやヤマイモなどの植物資源も豊富になり、土掘り用の打製石鍬や木の実などを割ってすりつぶす石皿やすり石などが使われた。(207字)


2017.2.26
 
     
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