2013年度 『大阪大学 その3』

    幕末の開港が流通構造や物価に与えた影響


(V)幕末の開港は、日本の政治・経済・社会・文化などに多大な影響をもたらした。そのうち、流通構造や物価に対する影響について、幕府の政策にもふれながら、具体的に述べなさい。(200字程度)

<考え方>
 問われていることは

(1) 幕末の開港が与えた影響について書く
(2) 流通構造や物価に与えた影響に限って書く
(3) 幕府の政策にふれながら書く
(4) 具体的に書く

である。

 これは、実教の教科書『日本史B』のP.245の3行目から13行目までを要約したのでよい。全文は以下の通り。

 貿易の拡大は流通機構にも大きな変動を及ぼした。在郷商人は開港地に商品を直接送るようになり、江戸の特権的問屋を頂点とする流通機構がくずれた。幕府は、1860年、五品江戸廻送令を出し、生糸・雑穀・水油・蝋・呉服を産地からいったん江戸に送るよう命じたが、在郷商人の活動や諸外国の反対のため効果はなかった。貿易開始後、金の大量流出がはじまり、幕府はこれを阻止するため、金貨の質を大きく下げる改鋳をおこなった(万延改鋳)。しかしこの改鋳は、輸出超過や流通機構の混乱とあいまって急激な物価上昇をもたらした。
 (注)金銀の比価は国内では、1:5であったのに対し、海外では1:15であった。そのため外国商人は、銀貨を持ち込み金貨である小判と交換すれば巨利を得ることができた。

 これを200字程度でまとめる。


<野澤の解答例>
貿易開始後、在郷商人が開港地に商品を直送したため、江戸の特権的問屋を頂点とする流通機構が崩れた。幕府は五品江戸廻送令を出して生糸などをいったん江戸に送るよう命じたが、在郷商人の活動や諸外国の反対のため効果はなかった。また、金銀比価の相違から金の大量流出が起こった。幕府はこれを阻止するため、金貨の質を大きく下げる万延改鋳を行ったが、輸出超過や流通機構の混乱とあいまって急激な物価上昇をもたらした。(198字)

 本当は山川の『詳説 日本史』にある「物価抑制を名目に貿易の統制をはかり、〜5品は必ず江戸の問屋をへて輸出するように命じた五品江戸廻送令」の部分を使用したいのだが、ここは「実教の教科書で」という原則に従った。

 2013.3.18
 
阪大入試問題indexへ戻る