2011年度 『大阪大学 その4』

太平洋戦争前の日独関係


【Ⅳ】国際連盟脱退により国際的に孤立した日本は、ドイツとの結びつきを深め戦争への道を進んでいくことになる。この点を踏まえ、二・二六事件から太平洋戦争開戦にいたる時期の日独関係について述べなさい。(200字程度)

<考え方>
 問われているのは、二・二六事件から太平洋戦争開戦までの日独関係である。

 ぼくのHPでは、『近代編後期6 軍部の台頭』の広田弘毅内閣から、『近代編後期7 第二次世界大戦』に書かれている部分である。
 流れとしては、広田弘毅内閣で日独防共協定→平沼騏一郎内閣は独ソ不可侵条約に対応できず内閣総辞職→米内光政内閣はドイツとの同盟に消極的→陸軍が倒閣→第2次近衛文麿で日独伊三国同盟ときて、これにそれぞれの背景・狙いを付け加えればよい。

 それでは、関係する箇所を実教の「日本史BP.339~344から抜き出してみる。

 1933年、ドイツではヒトラーがナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)の独裁体制を樹立し、国際連盟を脱退して、ヴェルサイユ体制との対決を強めていた。日本は1936年11月、ナチスードイツとのあいだにコミンテルンとソ連に対抗する日独防共協定をむすび、翌年これに加入したファシストーイタリアとともに、ソ連およびアメリカ・イギリス・フランスなどとの国際的対立を深めていった。(P.339.L12~P.340.L1)

 (日中戦争勃発、南京占領後)ドイツは和平を斡旋したが、首都占領で勢いにのった近衛内閣は1938年1月、「国民政府を対手とせず」と声明し(第1次近衛声明)、みずから戦争収拾の道をとざした。(P.341.L11~L.13)

 平沼内閣は、ドイツが提案してきた日独伊防共協定を軍事同盟に強化する問題で、ドイツに同調して同盟の敵対国にイギリス・フランスを加えるべきか否かをめぐって論争を重ねた。(陸軍がドイツに同調したのに対し、外相有田八郎や海軍は、アメリカ・イギリスとの対立の激化を恐れ、同盟の敵対国をソ連に限定することを主張した。)(略:この間にノモンハン事件が起こる。)しかも、8月にドイツとソ連とが不可侵条約をむすんだため、平沼内閣は情勢判断の力を失い、「欧州の天地は複雑怪奇」と声明して退陣し、陸軍大将阿部信行の内閣が成立した。(P.343.L6~L.13/()内は脚注)

 1939年9月、ドイツのポーランド侵攻により第二次世界大戦が勃発した。阿部内閣および1940年1月に成立した海軍大将米内光政の内閣は、大戦不介入の方針をとったが、ドイツが電撃戦でフランス・オランダなどを屈服させると、これを好機として、ドイツと同盟し南進と遂行せよという意見が陸軍を中心に台頭した。7月、米内内閣は退き、おりから新体制運動を展開していた近衛文麿が第2次近衛内閣を組織した。近衛内閣は「援蔣ルート」遮断・資源獲得を目的として、9月にフランス領インドシナ北部へ軍隊と進駐させるとともに(北部仏印進駐)、日独伊三国軍事同盟に調印した。(P.343.L20~P.344.L4)
 ヨーロッパ・アジアにおけるそれぞれの「新秩序」建設と指導的地位を認めあい、第三国から攻撃されたばあいの相互援助を約し、「枢軸国」とよばれる国際ファシズムの陣営を形成した。(P.344.脚注)

 
 これを200字程度でまとめる。

 日本は、ヴェルサイユ体制との対決を強めるドイツと、コミンテルンとソ連への対抗のため日独防共協定を結んだ。さらにドイツは軍事同盟への強化を提案してきたが、日本は判断に苦しみ、ドイツがソ連と不可侵条約を結ぶと対応しきれなかった。政府はドイツとの同盟には消極的であったが、第二次世界大戦が勃発し、ドイツがフランスなどを屈服させると、陸軍を中心に同盟への意見が強まった。日本は日独伊三国軍事同盟に調印し、ヨーロッパ・アジアにおけるそれぞれの新秩序建設と指導的地位を認めあった。

 これで233字ある。阪大の解答用紙は縦書き罫線(失礼しました。今年から「横書き罫線」。塚原哲也先生から御指摘を受けました。2011.3.5)なので、これでもOKじゃないかと思うのだが、やはり220字以内(プラスマイナス一割以内)にはしたい。

<野澤の解答例>
 日本は、ヴェルサイユ体制との対決を強めるドイツと、コミンテルンへの対抗を掲げて日独防共協定を結んだ。ドイツは軍事同盟への強化を提案してきたが、そのドイツがソ連と不可侵条約を結ぶと日本は対応できなかった。政府はドイツとの同盟に消極的であったが、第二次世界大戦が勃発しドイツが優勢になると、陸軍を中心に同盟論が強まった。日本は日独伊三国軍事同盟に調印し、ヨーロッパ・アジアにおけるそれぞれの新秩序建設と指導的地位を認めあった。(211字)


 今回は縮めるのにかなり苦労しました。思い切って、「陸軍を中心に同盟論が強まった。」を国内事情として全面カットする方法もあると思います。

2011.2.27


 
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