2009年度 『大阪大学 その1』


【T】「倭の五王」にかかわる考古資料や中国の歴史書をあげながら、その権力や支配の特質について述べなさい。(200字程度)

<考え方>
 問われているのは、
1 何について=「倭の五王」について
2 どうやって=「考古資料や中国の歴史書」をあげて
3 何を=「権力や支配の特質」

を書くのである。 

 これは山川の教科書でいえば、P23および27〜28をまとめればよい。
 ポイントは次の4点である。
(1)『宋書』倭国伝によると、朝鮮半島南部を巡る外交・軍事上の立場を有利にするために、中国の南朝に朝貢して倭王と認められた。
(2)倭王武の上表文に、倭の王権が勢力を拡大して地方豪族たちを服属させたとある。
(3)大王を中心としたヤマト政権は、関東地方から九州中部におよぶ地方豪族をすくみ込んだ支配体制を形成していたことが、埼玉県稲荷山古墳出土鉄剣銘と熊本県江田船山古墳出土鉄刀銘から分かる。
(4)氏姓制度をよばれる支配の仕組みをつくりあげていた。豪族たちは政権の職務を分担していた。
(5)新しい知識・技術を伝えた渡来人たちも供造などに編成されていた。

これをまとめると次のようになる。

『宋書』倭国伝によると、倭の五王は朝鮮半島南部での外交・軍事上の立場を有利にするために、中国の南朝に朝貢して倭王と認められた。倭王武の上表文には、王権が地方豪族を服属させたとあり、埼玉県稲荷山古墳出土鉄剣銘や熊本県江田船山古墳出土鉄刀銘からも大王を中心としたヤマト政権が、関東地方から九州中部におよぶ支配体制を形成していたことが分かる。政権は氏姓制度とよばれる支配の仕組みをつくりあげ、豪族たちが政権の職務を分担した他、新しい知識・技術を伝えた渡来人たちも政権内に組み込んでいた。

 しかしこれだと241字であり、いくら阪大の解答用紙がマス目ではなく罫線であり、文字数にはいい加減であるとはいえ、長すぎるであろう。
 苦しかったのは、どうやって40文字近く削るかであった。

<野澤の解答例>
 『宋書』倭国伝によると、倭の五王は朝鮮半島南部での立場を有利にするため、中国の南朝に朝貢して倭王と認められた。倭王武の上表文には地方豪族を服属させたとあり、埼玉県稲荷山古墳出土鉄剣銘や熊本県江田船山古墳出土鉄刀銘からも、大王を中心とした政権が関東から九州中部まで影響を及ぼしていたことが分かる。氏姓制度という仕組みによって豪族たちが政権の職務を分担した他、新しい知識・技術を伝えた渡来人たちも政権内に組み込んでいた。(208字)

2010.3.5

参考:駿台予備校の模範解答
『宋書』倭国伝などにみえる倭の五王は、五世紀初めから中国の南朝に朝貢し、安東大将軍などの称号を獲得することで、倭国や朝鮮半島南部における政治的優位の確保を図っていた。その後、鉄資源や渡来人の技術を独占し権力を強化した倭王は、埼玉県稲荷山古墳出土鉄剣銘や熊本県江田船山古墳出土の鉄刀銘によると、独自の天下を治める大王と称し、関東から九州中部までの地方豪族を従え官僚制的な支配機構の整備を進めていた。(200字)

 
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