入試問題で確認するテーマ史

1910~20年代の思想と社会

 
 1910~20年代の思想と社会について、次の(ア)~(エ)の語句を用いて論述せよ。
 (ア) 白樺派   (イ) 吉野作造   (ウ) 全国水平社   (エ) 平塚らいてう  (筑波大学2014年度 400字)

【指示語からジャンルを考える】
1吉野作造→政治面
・第一次護憲運動・大正政変が政治思想に大きな影響を与えた→大正デモクラシーの時代の幕開け→政治の民主化を求める国民の声
・大正デモクラシーの理念が吉野作造の民本主義と美濃部達吉の天皇機関説
・吉野作造の民本主義=天皇主権のもと(主権の所在は問わない)での民主主義の長所を採用→普通選挙制にもとづく政党内閣
・民衆が政党内閣制と普通選挙の実現を求める

2全国水平社、平塚らいてう→社会運動の高まり
・背景=大戦景気で労働者の実質賃金が低下→労働者の生活苦→社会運動の高まり。ロシア革命の影響
・1920年代に入ると社会運動が組織化
人間として生きる権利(生存権)の確保をめざして展開
・被差別部落の解放:全国水平社=被差別部落に対する社会的差別を政府の融和政策に頼らず自主的に撤廃
・女性の解放:平塚らいてう=青鞜社→新婦人協会→参政権の要求など、女性の地位を高める運動→治安警察法改正→女性の政治参加を実現
・労働運動:鈴木文治→友愛会→全国組織へ→第1回メーデー→日本労働総同盟(階級闘争主義へ転換)
・農民運動:日本農民組合=小作争議を指導

3白樺派→文学界
・自然主義文学(人間社会の暗い現実の姿の退潮→白樺派(人道主義・理想主義・人間賛歌)の白樺派などが活躍
・社会主義運動・労働運動の高揚→プロレタリア文学運動


 
<野澤の解答例>
 大正政変は政治思想に大きな影響を与え、天皇主権のもとでの民主政治の在り方を説いた吉野作造の民本主義と美濃部達吉の天皇機関説は、大正デモクラシーの理念となり、民衆は政党内閣制と普通選挙の実現を要求するようになった。大戦景気によって労働者の実質賃金が低下して生活が苦しくなると、ロシア革命の影響も受けて社会運動が高まった。運動は生存権の確保を目指して展開され、組織化していった。鈴木文治による友愛会は全国組織となり、日本労働総同盟と改めて階級闘争主義に転換した。被差別部落に対する社会的差別を撤廃する運動も本格化し、全国水平社が結成された。平塚らいてうの青鞜社に始まる女性の解放を目指す運動は、婦人参政権を要求する新婦人協会に発展し、農村では、日本農民組合が小作争議を指導した。文学界では自然主義が退潮して、人道主義の白樺派などが活躍する一方で、労働運動の高揚にともなってプロレタリア文学運動が起こった。(400字)
  

 2021.2.13

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