『犬養先生とさだまさしの思い出』

日本史には直接関係ないけど・・・

12月14日赤穂浪士討ち入り300年の日に、ある送別会から帰ってふっとTVを見たら、懐かしいフォークソング特集をNHKがやっていた。

妻に聞くと、番組では「懐かしいお父さん方は、ギターを持ってテレビの前に来ているでしょう」というようなことを言ったらしい。

その時、グレープの『精霊流し』が流れた。若き日のさだまさしが歌っていた。

大学2年の時、僕はさだまさしの隣で、彼の歌を聞いたことがある。

犬養孝先生のお伴をして、あるラジオ番組の「万葉旅行」に参加した時のことである。最後に屋外ステージで、さだまさしは『まほろば』を歌った。もの凄く寒い日で、僕たちの指もかじかんでいた。朝からルートを歩いてきた彼は、歌の前、笑顔で番組の進行に参加しながら、手は使い捨てカイロで1秒を惜しむように指を温めていた。そして見事にギターを弾いて、歌いあげた。さすがプロだと思った。

実はそれまで犬養先生は、さだまさしという人物を知らなかった。僕たちに

「今度、さだまさしという人と一緒にラジオに出ることになったんだけど、さだまさしって何をする人?有名なの?」

と聞いてきた。僕たちは代わるがわる、彼がいかに素晴らしいシンガーソングライターであるかを(シンガーソングライターが何たるかから)説明した。そして・・・・

番組放送の後、犬養先生はすっかり、さだまさしのファンになってしまっていた。

「彼は本当にさわやかないい青年だね」と言い

「君たち。これは素敵な本だから、一度読みなさい。」

と、さだまさしのエッセー集を紹介されたりもした。(犬養先生はどんなに多忙でも、贈られてきた本には目を通していたようだ。一度、里中満智子から飛鳥時代を舞台にしたマンガを贈られたが、「これはどういう順番で読むの?」と困ったように聞かれた。マンガのコマ割りには規則性がないので分からなかったのである。「どうして君たちには順番が分かるの?」と言われても説明の仕様がなく、これはギブアップした。)

犬養先生は、学生が家でワイワイ言っている雰囲気が好きな人だった。そして「犬養節」と言われる万葉集の歌い方でも分かるように、歌の好きな方だった。

その先生が、さだまさしの歌の中で一番気に入ったのが『精霊流し』だった。九州に縁があり、早くに奥さんを亡くされた先生は、感じるところがあったのかもしれない。

僕は何度も先生の前で、ギターで『精霊流し』を弾いた。先生と一緒に、その場にいたみんなで歌った。

昔の話である。でも・・・

人生には素敵な出会いがある。そして、君たちが進学を目指す理由の一つもそこにある。

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