頂いた質問から(7)

『鎖国の目的と影響について述べよ』

 京都府の中学2年の女子生徒さんから、次のような質問を受けました。(これも定期考査対策です。)

 <頂いた質問>

 鎖国の目的と影響について次の用語を使って3〜5行程度でまとめなさい。

 使用しなければならない用語 

キリスト教  貿易  幕藩体制(支配体制)  世界の進歩(近代化)  文化」

 大学受験生にとっては基本中の基本です。しかし、意外に大学受験でも同じような設問はあるのではないでしょうか。
 

<野澤の回答>

鎖国の目的は、幕藩体制を強化・維持するためにキリスト教を禁止し、貿易を独占することでした。(完全に国を閉ざしてしまって、外国と交流しないことではありません。オランダ・中国・朝鮮とは交流・交易がありました。鎖国とは極端な貿易統制に過ぎません。)その間にヨーロッパでは産業革命が起こり、近代化が進みます。この点については日本は取り残される形となりました。しかし、元禄文化に見られるような、浮世絵や文学作品など日本独自の優れた芸術が生み出され、開国後は外国にも高く評価されました。

これをまとめると

鎖国は、幕藩体制の強化・維持のためキリスト教を禁止し、貿易を独占することを目的に行われた。その結果、産業革命など世界の近代化の流れからは取り残されることになったが、元禄文化に見られるような、日本独自の優れた文化が発達した。


 この質問を受けてとってから、自分のHPを見直してみた。反省したのは、基本中の基本であるこの鎖国とは何かという説明がなされていなかったことである。随時、改訂していかなけらばならない。

 鎖国とはあくまでも、幕藩体制の強化を図るための極端な貿易統制に過ぎず、国を閉ざしてしまって、外国と一切付き合わないということではない。

 授業では、「平成の今でも完全な自由貿易ではなく、もし数百年後に世界が完全な自由貿易の時代になっていたとしたら、歴史の授業で、『17世紀に始まった日本の鎖国は、次第に制限が緩和されながらも、21世紀まで続いた。』なんて教えられるかも知れない。鎖国とは貿易統制のレベルの問題だ。」と言ってきた。

 朱印船を派遣していたのが島津、松浦、有馬など西国の有力外様大名であったことを考えれば、幕府が貿易を独占することによって幕府財政を強化するとともに、大名の経済力の削減を図ったことが分かる。
 一方、キリスト教の禁圧については、島原の乱(島原・天草一揆/1637)ののち、絵踏、宗門改めが行われるようになったことや、キリスト教布教と密接な関係があったポルトガルが来航を禁止され、貿易と布教とを切り離していたオランダが許されたことからも分かる。

 結果として幕末、日本は産業革命を経て工業化に成功した欧米諸国の圧力にさらされることになるわけだが、一方で日本独特の技術が発達した。それは浮き世などの芸術のみではなく、絡繰り人形など今でいうロボット工学ともいえる分野もあった。
 惜しむらくは、鎖国がもたらした幕藩体制の安定の中で、日本で生まれた世界に冠たる工業技術などが、体制を脅かす危険なものと認識され、発展の芽を摘まれていったことである。日本が国際競争にさらされる国であったならば、新技術は国益を生むものとして高く評価され、発達したことであったろう。

 2006.7.2

ところで・・・

ぼくのHPって中学生が見ても理解できるのですね。うれしいことです。
最近は、高校生・大学受験生からよりも中学生からの質問のほうが多いように思います。
以前にも書いたけど、歴史が好きでやる気のある人なら、年齢は関係ないですよ。いつでも質問受け付けています。それに今回の中学2年の女子生徒さんもそうだけど、みんな文章がしっかりしていて礼儀正しいしね。

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