『日常から拾える受験知識ーテレビ放送50年ー』

 言わずもがなのことだが、受験勉強は座学であり、基本的には机に向かって一人でするものだ。図書館等で他の生徒の存在に刺激を受けながら勉強するのもいいが、たとえ友だちと一緒に(図書館へ)行っても、「昼食や帰りの時間だけ約束して、別々の机に座れ」と、ぼくの授業を受けた者は聞かされたはずである。「友だちと一緒に勉強」なんてのは、大半が馴れ合いに終わる。

 その上でアンテナを広げてみると、意外に受験知識は日常何気なく見過ごしていることに散りばめられている。

 例えば今、高校野球甲子園大会が行われているが、いわゆる「スクイズバント」のスクイズは、squeezeである。squeezeは高校基本語で、「絞り出す」という意味である。なるほど、1点を「絞り出す」バント、言い得て妙ではないか。

 またプロ野球では最近、「スプリット・フィンガー・ファストボール」という言葉をよく聞く。辞書を引くとsplit fingersとあり、「フォークボールを投げるときの球の持ち方」と書いてある。スプリットはsplitで、実はこれも高校基本語、主な意味は「割る、裂く。割れる」である。「指を割って(裂いて)投げる速いボール」という訳だ。判定が割れることをsplit decisionと言ったりもする。

 そして、日本史でいうと「テレビ放送50年」という企画をNHKが大々的に行っている。今年は2003年だからテレビ放送が始まったのは、2003−50=1953年となる。これが時に出題される。「ラジオ放送開始は戦前、テレビ放送開始は戦後」といった具合である。(現代編5『戦後の景気変動/戦後の文化』参照)

 ちなみにテレビの普及率が大幅に伸びたのは、当時皇太子であった現天皇の成婚パレードを中継した1959年であった。テレビ朝日やフジテレビも同年に開局している。1950年代後半、テレビは電気冷蔵庫、電気洗濯機とともに「三種の神器」と呼ばれたことは知っておかなければならない。

 ところでこの年は、NHK教育放送が始まった年でもあった。最近、この教育テレビの幼児向け番組がおもしろい。親も一緒に楽しめるように配慮しているためであろうが、ユーモアにあふれている(子どもには分からないんじゃないか)。例えば、

むしまるQ」(昆虫や動物を扱った番組)で放送された歌から
 森へ行ったらカブトムシもクワガタムシも全くいない。一体どこへ行ってしまったのかと探したら、何とデパートで高い値段で売られていた。→「一寸の虫にも五分の消費税

クインテット」(音楽を扱った人形劇・・・楽器を演奏する人形の指の動きがすごく正確で不思議)から
 「イメージを膨らませて下さい。」「海といえば波。波のどんぶり〜、どんぶり〜というは?」「並の丼といえば、牛丼ですか。」
(大体、午後5時台に放送される番組のテーマ曲からして、「ゆうがたクインテット」→「夕方クインテット」と「You gotta Quintet」とがかけてある。)

閑話休題

 「こういう時、英語で何ていうのかな?」という意識を常に持つことが、英会話や英作文を上達させるコツだという話はよく聞く。しかしこれは何も英語に限ったことではない。
 座学で得た知識と、身の回りのものとを結びつけられるかどうかは、やはり普段の姿勢にかかっている。そして、こうしたことが無味乾燥だと言われる受験勉強に、幅やゆとりを与えるのだと思う。
 
2003.8.16   

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